『クールフィフティビズ』とは
50代からのビジネスファッション・スタイル。ビジネスシーンにおいてTPOをわきまえて相手を気遣い、自身の立場を考えた夏季の服装。イメージは逆の発想で自身がプライベートで出かける際の『よそ行きの格好』をビジネスシーンに置き換えること。スタイリングだけではなく、マインドも含めた「日本人の美学」。
着こなしだけじゃない、見えないところの着方も大切なんです。
コーディネイトやスタイリングなど外見が大切なのは皆さんも当然お分かりだと思います。しかし、意外にそれぞれのアイテムを内側からキレイに着用するということまでは、そんなに気になさらないのかもしれません。
でも、知っていて損はないのでお話します。それらをすることによって外見が更に良く見えると思いますよ。アイテム別に紹介していきます。
ジャケット(ブレザー)、スーツの上着
春夏物として説明します。ほとんどの既製品は背中の裏地が無いもの(背抜き)になります。その中で一部、肩甲骨の辺りまでカーブの入った羽のような裏地などが付いているものがあります。これはジャケットその物の型崩れ等を防ぐためと着脱がしやすいために付いています。
しかしこれらは、着やすいからと無造作に着てしまうと内側の背中でめくれ上がり、外側から見るとモコモコしているのがわかるのと、それを気にせず着たままでいると逆に型崩れの原因にもなってしまいます。また変な位置にシワが入ったり、下に着ているシャツにまでシワが響き着心地にも影響を与えます。
後ろ姿のチェックと違和感がある場合は再度着直すか、ジャケットの後ろの裾から背中に手を入れて裏地を引っ張って直してください。
次に最近はECで購入することも多いと思います。お店で購入すると当たり前にされていたケアがされてない場合があります。袖タグと言われるネームラベルが左袖口に付いていたら必ず取ります。
それから仕付け糸も取ります。付いている場所としては肩(肩線に目立つ色の糸が付いている場合があります。)、胸ポケット、腰ポケット、後ろのベントと言われるスリット部です。
スタイリング的には腰ポケットに物を入れることは、膨らんで見えてしまうのでおススメではありません。使わないためには仕付け糸はあえて取らず使えなくする人もいらっしゃいます。収納には内ポケットを活用しましょう。
袖タグも仕付け糸も刃物等で慎重にとることはできますが、お店で使用しているリッパーと言われる小さな道具が使いやすく安全です。裁縫道具店などで扱っています。袖タグとベントの仕付け糸は忘れずに絶対に取りましょう。
『クールフィフティビズ』ではジャケットはキーアイテムです。真夏には真夏のTPOに従わなければならないことがあります。
ネイビーのジャケットと清涼感のあるブルー系のニットタイ(どんなクールビズのスタイリングにでも合わせることができます。ニットタイは半袖シャツにもマッチします。)は常に持ち歩かずとも、最低限オフィスに置いておきましょう。
*クールビズスタイルのままお通夜に出席する場合、紺のジャケットがあれば喪章(合わせて用意しておきましょう。)をすることで失礼にあたることはありません。
シャツ
シャツにも見えないところの着方があります。とは言えクールビズではジャケットを着ない機会が多いので丸見えです。意外に気にされていませんが、シャツを着てスラックスの中にシャツの裾を入れてベルトをします。実はこれで終わりではありません。
次に、シャツ姿で縦に入るシワは正面や背面には残さず、両脇に寄せていきます。両脇に寄せることにより自然に静止している状態(腕を下した状態)で腕に隠され、360度シワは見えなくなります。また、シワを両脇に溜めていることによりシワの層が脇の縫い目と重なって厚くなり、スラックスからシャツが出にくくもなるのです。
今度は襟元についてです。ボタンは通常第一ボタンをはずしただけでOKです。ほとんどの人が肌着を着ていると思います。そしてその肌着はVネックが良いですね。それはシャツの襟元から肌着が見えなくてエレガントだからです。
最悪パターンその①は丸首肌着の物です。色が白でもシャツの襟元から見えることがNGです。その②はVネックの肌着は着ていてもシャツを第二ボタンまで開けている。結果、襟元から肌着が見えるとNGですし、第二ボタンまでは開けすぎで、品がありませんね。その③は白地のシャツの下から色物や柄物が透けていること。絶対にしないでください。
シャツはそもそもが肌着というか下着です。シャツの下に肌着を着ているということは下着の重ね着をしているのと同じです。(カジュアルのスタイリングでは重ね着は勿論ありです。)
シャツ姿でいるということは本来、下着姿でいるのと同じことだったんですね。ですから昔の人は人前で上着を脱ぐときに「失礼します。」(下着姿になります。という意味)と一言相手にことわっていましたよね。
今もゴルフ場で格式のあるクラブハウスなどはジャケット持参となっています。英国紳士の社交場でもありましたからね。競馬場もだったんですよね。日本は全く違いますけどね。
襟型のことについてですが、一番おススメはボタンダウンですが、普段あまり着用されないワイドスプレッドカラー(襟の広がった襟型)や ホリゾンタル(ワイドよりさらに横に広がっている襟型)もカッコ良いです。
これらをノーネクタイで着るポイントがあります。襟の裏側に切り込みがあってその中にカラーステイと呼ばれる透明樹脂の小さいプレート見たいなものが入っていることがあると思います。ノーネクタイで着る時はこれを抜き取ります。そうすることで自然な襟のカーブが出てキレイに見えます。
元々カラーステイはネクタイをした際に襟が跳ねることを防ぐものです。ノーネクタイで入れたままで着ると襟が固く重たいままで反発し、第一ボタンを開けるとシャツ本体の鎖骨あたりがグシャっとなります。良い生地のシャツほど柔らかいのでグシャっとなりやすいです。
抜いたカラーステイは取って置いてネクタイをするときにまた入れて使います。ただし洗濯の際はまた抜き取ることをおススメします。クリーニングに出す際も同じです。ネットに入れて洗濯しない場合は洗濯機の底に落ちて故障の原因になることもあり得ますしアイロンをそのままかけると襟にステイの当たりが出ることもあります。
クリーニング店ではステイを入れて出された場合仕上がりに支障はありませんが、ステイが無くなっている時があります。無くなったことに対して何もフォローがないことが多いと思います。カラーステイだけが必要な場合はシャツのご購入店やオーダーワイシャツを取り扱っているお店にご相談してみてください。
ジャケットの見えないところの着方の補足ですが、長袖シャツの場合袖口の上にもう一つ小さいボタンが付いています。ジャケットを着る前提ではそこのボタン(剣ボロのボタンと言います。)も留めておきましょう。ジャケットを脱いだ際、肌が見えすぎてしまいます。
シャツの上にジャケットを羽織りました。前述しましたが背中の裏地を直すと同時に、できればジャケットの内側から手を入れ肩にジャケットの内側の肩がキレイに乗っかるようにジャケットを前内側に引っ張ります。そしてさらにシャツの袖口を下に引っ張ります。
半袖の場合、ジャケットを前内側に引っ張った後に内側の脇の下に手を入れてクシャっとなっているシャツの脇の下から袖にかけて引っ張り整えます。これらをすることでジャケットの着心地と動きやすさが全然変わるのです。
シャツをキレイにサイズもキチンと合わせて着ることがジャケットやスーツの着心地、動きに影響を与えているのも事実です。一度実験していただきたいのが、素肌にスーツの上着を着て少し動いてみてください。シャツを着ない時より着心地が良いはずです。
スーツやテーラードジャケットはシャツよりも実は人体型とその動きを考えて作られていることがわかります。シャツは下着で消耗品ですからスーツと同等の構造にする必要がありません。それでもこだわっていらっしゃる方はフルオーダーなどにより追及されることも少なくありませんが、価格はスーツに近くなります。
スラックス(パンツ) *トラウザーズとイギリス英語で言っているところもあります。
スラックスの場合、まずはシャツの収め方です。一般的なシャツはシャツテールと呼ばれ、前と後ろが長く半円のようになっています。このカットがキレイに基本、収まるようにすることが大切です。後ろはピップを覆い、前もシワにならないように入れます。
そして前述したようにシャツの表に出たシワは両脇に寄せましょう。これがキレイに見えてシャツが出にくくなる方法です。一般的なスラックスでもウエストの内側に滑り止めが付いたものもありますが、裾上げを依頼したときに一緒に別料金で付けてもらうこともできます。(2000円前後)
「スラックスからシャツが出てほしくない。」という思いは昔からで、シャツテールの名残はその象徴です。ヨーロッパの昔、シャツはシャツテールの前後に留め具が付いていて股の下で留めており、尚かつ下着のパンツなどは履いていなかったと言われています。(似た感じはベビー服によくあります。女性下着にも)
そんなことからもシャツは下着という地位だったことがうかがえます。
さて、内側を見ていきます。ウエスト部にテングと呼ばれる出っ張っていてボタンホールが開いたところが付いているものもあります。これは内側のボタンにかけて下腹を固定してファスナーの動きをスムーズにします。おら技(自分技)ですが、ウエストがキツクなったら使用しないことで体感1㎝は楽になります。
裏側にはポケット裏地と股のところにシックという、ひし形の布があります。実際に新に購入する際に確認してほしいのですが、私たちの年代は下半身に少々衰えが見られる場合がありますので、スラックスの内側で使われている布たちが黒であることをおススメします。
人によっては清涼感のあるステテコみたいなものを着用します。生地を直接傷めることも汚れを付けることもないのでこれが正解です。最近は色々出ています。
余談ですが、ファスナーの開閉だけで立って用を足すことが、危険になってきます。勿論、個人差はありますが、私の場合シャツを入れ直す手間もありますので、いつの日からか開いていれば個室の方で用を足しています。
そして知人宅に伺った際にも「奥様から便座下ろしてくださいね。」と微笑まれましたら「座ってしてください!」という意味です。察しておきましょう。
ほとんどのスラックスには膝裏と呼ばれる膝を中心とした上下にポリエステルなどの別布で裏地が付いています。汗が直接スラックスにシミ出ないようにと、滑らかに動けるように、それと座っている時間が長いと、どうしても膝が出てしまい立ち上がった時に膝の形が残るのを防ぐためなのです。
さらに裾をめくって後部を見ると踵の当たるところにだけ靴擦れ(くつずれ)というスラックスと同じ生地をテープ状にしてキレイに縫われているところがあります。そして更に裾上げされた後部を良く見ると1㎜程度そのテープが見えています。これが正解です。
裾の仕上げでシングルまたはダブル、モーニングを指定した場合、踵の部分は靴が擦れやすく、裾上げされた部分を擦り切れにくくするために1㎜程度出っ張らしているのです。ちなみに、カジュアルパンツやジーンズのステッチ仕上げには付きません。
最後にスラックス、もしくは綿パンツをクールビズ仕様で履く場合、「クリースライン」を入れることが最も大切です。
スラックスにはこのクリースラインが取れにくい加工を付けているものも多くあります。シワにならないようにハンガーに吊るして置くだけで、いつもラインはクッキリしています。
クリースラインはスチームアイロンでは付けることができません。普通のアイロンかパンツプレッサーを使用するかクリーニングに出すことになります。ご自身のライフスタイルに合わせて、いつも清潔感を保つことを心掛けてくださいね。
スラックスの履きこなしとウェストの見え方ですが。着飾るという意味でベルトは必ず使用します。その際、締めすぎには注意します。ベルトは元々剣や銃などを所持するための物でアクセサリー系アイテムです。ズレ落ち防止策はサスペンダーを使用していました。
そのことからスラックスのサイズ合わせの段階でベルト無し状態でウエストも十分に確認します。もしその後スリムになられ、ベルトをした時にシワが寄るようならば、そのシワは前に残すのではなく、後ろの中心に寄せていき目立たなくします。
そして、時間のある時にでも再修理に出すことをおススメします。(お店にもよりますが、一週間前後の納期で2000円前後の代金がかかると思ってください。)
見えないところのスタイリング。ご理解いただけましたでしょうか。できることは、ぜひ 実行してみてくださいね。いつか更新は動画などでも解説できるようになれればいいなと思っています。ありがとうございました。
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